電力供給について考える

3.11を迎えて

もう、今日で丸二年だ。いろいろと考えさせられた2年間だった。

私は、思想で語りたくない.
事実と根拠を元に考えたい.常々そう思っている。


ただ、実際にそうできているかというと、それは怪しい.極めて怪しい.
だからこそ、考えていきたい.


原発がなかった」状態から物事を考えられるなら、そんなに楽なことはない。
作らなければいいからだ。あるいは、もっと完全に安全性とゴミ処理まで確立してからの導入にすれば。

しかし、実際問題としてもう40年も稼働している現実があるため、それはアンフェアというものだ。


であれば、現在の日本を初期状態にした上で思考を巡らせるしかない。それ以外は現実として取り得ないからだ。

原子力発電について

次の問題を本当にクリアしたなら、動かしても良いと思うよ。正直なところ.
でも、クリアできないでしょ?

1.ゴミ処理の問題*1
破綻しているよね? 再処理をする六ヶ所村だって、最終処分場じゃないんだし。最終処分を面倒見れる政権はどこにもありえない。10万年にも及ぶ管理を行える人間は居ないからだ。
にも関わらず、後工程の事も担保せずに「原子力発電は安全だ」「原子力発電はローコストだ」と言うのはナンセンス!!
ここを確保してから、言ってください.

2.運転時の安全の問題
最近だと、なにやらミサイルまで想定しなきゃいけなさそうだけど、まぁ、とにかく危うい。
軽水炉で考えると、黒煙炉に比べれば、正のフィードバックがかかって(原子炉が空炊きになると、水が無くなるので高速中性子に減衰がかからなくなり、熱中性子で反応が進む核分裂反応が抑えられる)いるんでしょうけど、水素の発生は抑えようがないし*2、火山大国の日本のどこに、安全な地盤があるのだ。プルサーマル型で考えるなら、使用済の燃料棒は数百年場内保存しなきゃいけない。その間、福島第一のようなプールになっては困るのだ.
あのクラスの津波が1000年に1度の頻度だとしましょう.
貯蔵プールはこんな状態だとしましょう。
使用済燃料は水中での長期保存に耐えられない『燃料プール底に金属片が溶けて沈殿、致死量の放射線を放出』 - 脱原発・放射能

さらに、MOX燃料は冷却に場内保管で500年かかるというから……
プルサーマルで使ったMOX燃料は地層処分の前に500年の地上保管が必要。つまり、原発現地にずっと保管!! taked4700

一つの原子力発電所について考えただけで、「回避不能と思われる津波」と地震に見舞われる期待値が1/2を越えてしまう……
つまり、プルトニウムを消費するという名目でMOX燃料に手をつけると、ますます始末の悪い最終処分場すら確定しないゴミが増えていってしまう.

それは無責任というものだろう。しかも、プルトニウムは増えつづけてしまうという構図を抱えている。

ではどうするか。

一つの希望は、先日の報道にも合った京都大学加速器駆動未臨界炉だろう。

国際的にもプルトニウムの保持に関して、「言い訳」ができるのではなかろうか?

すなわち、現状のまま何も担保せずに原子力を収束させてしまうと「プルトニウム」が膨大な量宙に浮いてしまい、日本は核武装をするのかという目で見られてしまう。
今までは、これを燃料として再使用するのだという「言い訳」を行ってきた。

ここははっきりと、「現在保持しているプルトニウムという『ゴミ』は責任をもって処分していく、そのための開発に注力していく」と国内にも、国際的にも約束してはどうだろう?
そして、その開発が実用化するまでの期間、中間保存するわけである。備蓄ではなく.

あくまでも、資産としてではなく、処分対象として見ていくことで、国の内外への説得の材料がつかめるのではないか?

ただただ、破綻している燃料リサイクルを継続するためだけに原発を動かすよりはよっぽどよいと思う。
また、実際に処分に際し、エネルギー収支は加速器に投入するより得られる熱量の方が多いというのだから、その意味では処分対象のプルトニウムを再び「燃料」と
呼ぶことも出来るかもしれない……あくまで処分対象としてと言う方を強く見なければならないが.

また、id:kyrina:20130201:p1 でも言及したことに関連するが、加速器機動未臨界炉は中性子を処分対象に打ち込んで核種変換を行っている。
この効率に関しては、核融合の方が優れていて、一度に処分できる量も最終的にはこちらの方が多いだろう.

もちろん、中性子の遮蔽技術は向上させる必要がある。中性子はもっとも危険な放射線の一つであるからだ。

いずれにしろ、ただ単に「安全が確認された原子力発電所から再稼働させていく」では、不安が払拭されないのだ。

十分な方針を打ち出して、少なくとも現状の軽水炉プルサーマルでの利用という方法以外の方針を示してほしい。

元々始めなければ良かったが、今現実に存在する以上、日本は処分の方法に回答をつけていく必要があると思う。被爆国として世界に反核を訴えてきた日本の責任が問われていく、そう思う。そして、この技術が確立できるなら、後ろめたさを覚えずに世界に貢献でき、米露の余剰の核兵器の処分も進むだろう。

間繋ぎには

では、処分方法が確立するまでの間、電力はどうするか。

地道な手段しかないと思われるが、日本はせっかく温泉大国で、火山列島なわけである。
やはり地熱発電によるのがもっとも手っ取り早いだろう。

そのためには、自然公園法に手をつける必要があると思われる。国立公園内に作るのが筋であろうからだ。*3

脚注にも入れたが、日本の地熱エネルギーのポテンシャルは高く、輸出に耐える技術だ。国内で進まないのは政府の補助が(原子力に比べて)少ないことと、自然公園法に阻まれているからだということらしい。

ならば、脱原発運動を抵抗勢力ではなく、応援団として捉えなおし、十分な議論を行って地熱発電を推進することで、高価なLNG発電を減らして行くことが出来るだろう。

メタンハイドレート

埋蔵量が多いということだが、こちらはまだ採掘の手段も、高効率な発電方法もまだ確立はしてないと思われる。
今後には期待できるだろうが、やはり地熱よりは後になるのではないだろうか?

また、日本に大量に埋蔵されているということだが、逆に言えば、世界には他にそれほど大量には見つかっていない。となれば、この技術を輸出する需要は大きくないと思われる.(将来的に、他の地域で埋蔵が確認されていけばまた別だろうが)、日本の内側だけ見ていくには良いが、国際競争力を持つ技術という意味では優先度はやや落ちるのではないだろうか?*4

宇宙エレベーター!!

ページが見つかりません|JSEA 一般社団法人 宇宙エレベーター協会によれば、大林組が2050年までに静止軌道までのエレベーターを作るという構想が出されている。
従来から、宇宙で発電するという発電衛星構想はあったが、その送電方法がマイクロ波で送るとか問題点が合った.

その点、宇宙エレベータが作成出きるなら物資の運搬だけではなく、送電線としても十分機能するはずだ。

静止軌道上に展開した発電衛星群からの電力は、赤道上に配置された*5基地を経由して、地上に供給されていくことになる。
その際の送電は高圧直流送電かな?

最後、少しSFがかった話にはなったが、すくなくとも、現状の方式の原子力発電を続けるしか道が無い『わけではない』とは言えるのではなかろうか?

とはいえ、電子工学科を卒業しているとはいえ、私は発電のプロでは全くない。ただ、まったくのずぶの素人でもない。
たたき台にもならないというのであれば残念だが、『もうダメだ』と言うほど悲観したものでもないのだ、政治に要望していけることはたくさんあると考えるきっかけになってくれればと……あの災害から2年の節目の今日、そう思う。

*1:京都大学の研究には、期待しています。個人的には中性子源に核融合を持ってこれれば、「すぐに停止できて、なおかつエネルギーも取り出し続けられる」処理サイクルができそうな気がしているけど、検証まではできないので……

*2:なんせ、単独の中性子半減期10分程で陽子と電子とニュートリノに崩壊するので、結局水素ガスが発生する

*3:参考: ポテンシャルが非常に高い日本の地熱発電 2011年06月21日 | 大和総研グループ | 溝端 幹雄アイスランドから地熱発電設備5基、22.5万kWを一括受注|三菱重工

*4:とはいえ、省資源国の日本が潤沢に利用できるエネルギー源としてはもちろん活用して行ってほしいし、発電効率も上げて行って欲しいと思う

*5:こんな施設は、その構造上、赤道上にしか作れない